久しぶりに映画館で観る作品がこれで良かった『映画大好きポンポさん』感想
作品の存在を初めて知ったのは、深夜アニメの間で流れているCMだったかな。
「めっちゃ動いてる!」っていうのが第一印象。
それだけで「なんだか面白そう。観てみようかな」って気になりました。
そうして仕事終わりの金曜夜に映画館へ観に行きました。『映画大好きポンポさん』。
本来であれば、土曜日の日中に観に行きたかったんです。なぜなら体調がよいから。
仕事終わりはね、下手すりゃ眠っちゃうからあんまり見に行かないのよ、普段は。
いやあ、でも『ポンポさん』。眠くなるどころか、ドキドキして、わくわくして、ちょっと泣けて、笑顔になれた素晴らしい映画だった。
以下、内容についても言及するので要注意。
。。。
『ポンポさん』、CMで受けた印象のとおり、めちゃくちゃ動くんですよね。キャラクター皆がとてもいきいきしてて、なんだか見てるこっちが嬉しくなっちゃって、それで泣けてしまった。
画に魅力があるので引き込まれたし、キャラクターデザインも皆かわいらしい。
あらすじは「新人監督が映画を撮る話」なんですけれど、アニメーションであることを十二分に生かした映像表現が観てて楽しい!迫力がある!
例えば、映像素材の編集作業って、本来ならPC画面上で行われるものなので、正直見栄えは地味になる。本作ではスクリーンを所狭しと暴れまわるフィルムを主人公が剣でばっさばっさと切り倒す(=カットする)表現になっていたので、観ててわかりやすかったし楽しかった。
あと、場面転換の演出も一工夫あるのが感心したよね。
画面の真ん中を飛行機が横断して2分されたと思えば、海外のシーンへ。これだけで「あ、飛行機でロケに出かけたんだな」ってのがわかる。
こういった工夫が随所に見られるので、テンポよくさくさく物語は進んでいく。
ギミック(っていう表現で合っているのかな?)の面で言うと、OPも素晴らしかった!
当然はじめは『ポンポさん』のオープニング曲に合わせて主要キャラクターの紹介映像、という風に捉えられるんだけれど、これって最後まで見てみると、ジーンが賞を取ったニャカデミー賞のオープニングアクトと、アランが『MEISTER』に融資するため、会社の重役を説得するために撮ったポンポさんたちのインタビュー素材でもあることがわかるんですよね。
オープニングが物語終盤の先見せだと分かった時には思わずにんまり。こういうの好きなんですよね。同じ場面の持つ意味が見せ方次第で変わるというのか?面白いですよね。
ちょっと違うけれど、先見せという意味では『M:i:Ⅲ』とか『ワン・ウーマン・ショー~甘い幻~』とかも好き。点がつながって線になる感覚が気持ちいい。
上映時間も私にはちょうど良かった。
ポンポさんが序盤で「長い映画は嫌い。客に長時間の集中を求めるのはどうかと思う」的なことを言っていたんだけれども、この映画はぴったり90分で終わる。また、それが物語のラストシーン、ニャカデミー賞授賞式で受賞作(MEISTER)の好きな点を聞かれたジーンの回答「上映時間が90分ってところですかね」で明かされると同時にタイムコードが時間を迎え、エンドロールが流れ出す気持ちよさ。フィクション(映画)とノンフィクション(現実)が交差するこの瞬間がたまらない。最後の最後まで楽しませてもらえた、良いソフトクリームみたいな映画。
芝居で言うと、清水尋也がとてもうまかった。映画やドラマで活躍しているのは知ってたから、声優経験もあったのかなあと思ってたら、今回が声優としては初出演らしく。驚いたね。芝居とか全然詳しくない素人の感想だけれど、ジーンにとてもはまっていたと思う。
ナタリー役の大谷凜香は「俳優が声を当ててる」感が正直強かったが、ナタリーが”俳優の卵”だったので、その初々しさこそがナタリー役に必要だったのかなって(パンフレットにもそんなことが書いてあった)。物語が進むにつれて、なんだか耳なじみもよくって、特徴のある声と芝居だなあって思ってました。
「聞き覚えがあるな。『魔女見習い』出てたか?」って上映終了後に調べてみたけれどかすってもいませんでした。『魔女見習いを探して』もめっちゃ良かったなあ。「人生に躓いたとき、壁にぶち当たったとき、好きなものはいつだって寄り添ってくれるし、背中を押してくれることもある味方だ」というメッセージを受け取ってとても共感した。私にとってのおジャ魔女はポルノグラフィティかなあ。また観たくなってきたな。Blu-ray買おうかな。
物語終盤の展開についても。
『MEISTER』の編集作業を通して「映画が好きなのはそこに自分を見つけるから」ということにジーンは気づかされるが、気づく前から『MEISTER』の主人公とジーンが重なるように演出されてたんですよね。その後の追加撮影のシーンも。セリフだけでなく、映像表現も合わさることでより大きな説得力を生むこの一連のシーンには震えたね。そして、「何かを選ぶということはそれ以外を捨てるということ」と、映画作りにも人生にも通じる心理を説かれて私の心には深々と突き刺さりました。
パンフレットを読んで知ったんですが、アランって劇場版オリジナルキャラクターなんですね。ジーンとアランの関係がとてもよかったと私は感じていて。
『目は死んでいるが、だからこそ映画監督になれたジーン』と、『学生時代はすべてを手に入れていたが、社会では埋もれてどうにも立ち行かなくなってしまったアラン』。
目の輝きを失いかけていたアランが、再会したジーンの目に光を見つけ、その光を絶やさないために奮起するのにとても燃えた。めっちゃイイ奴。しかも有能。
多分、ジーンはアランのことをなんとも思っていなかっただろうから(もちろん融資の件で感謝はしただろうけれど)、このアラン→ジーンの一方通行的な、アンバランスなベクトルがよかったな。ジーンは人に影響を与えられる人物。
映画館に行くのは3月の『シンエヴァ』以来。
しかも今年に入ってからは例年に比べて映画を観る本数が激減していた私ですが、『ポンポさん』を観て、改めて映画館で映画を鑑賞することのすばらしさ、映画自体のすばらしさを再認識できたように思う。
この映画を、映画館で観られて良かった。久しぶりに映画館で観る作品が『映画大好きポンポさん』で本当に良かった。たしかな満足。